先週と今週の読んだ

とりあえず目標週二冊

高熱隧道 (新潮文庫)

高熱隧道 (新潮文庫)

岩盤温度165℃、坑内温度60℃オーバー。人知を超えた状況下で、水力発電用隧道=トンネルを掘り進んだ男たちを描いた物語・・・と書くとあたかもプロジェクトX風の作品かと思いがちですが実際の内容はその逆と言ってもいいものです。

現在のように耐温技術も発達しておらず、水を浴びながらでないと立ってるだけで火傷するほどの坑内温度を誇る非人間的な作業環境や、泡雪崩に代表される黒部山系の冬季の過酷な自然環境を前に積みあがる死者数。当初は高給を励みに作業に精を出していた工夫たちも、次第に「何故自分達はこうもひどい死に方をしなければならないのか」という疑問が頭をよぎるようになる。「仲間」であるはずのトンネル技師達との間で改めて浮き彫りとなった「使う者と使われる者」という関係。終盤の本坑開通時に見られた工夫たちの鬼気迫る作業風景にはこうした関係に対する静かな怒りと、意地という言葉では言い表せないもっと根源的な人としての尊厳みたいなものがにじみ出てる様に感じられた。兵士として死地に送られ「何故自分達はこうも理不尽に死ななければならないのか」という問題に多くの人が直面した第二次大戦期、もう一つの「戦争」がここでも行われていたのだと思う。



題材的に「数々の困難を乗り越えて工事を完遂したトンネル技師たちの物語」とプロX風に綺麗にまとめることも出来たのに、敢えて普段は覆い隠されてる人間関係の根本の部分が露わになる後味の悪い作品に仕上げてくるのが吉村昭クオリティーw('A`)
羆嵐から入ってここまで随分読んできたけど、この調子で全部読んでしまおうかな・・・
都市計画の世界史 (講談社現代新書)

都市計画の世界史 (講談社現代新書)

新書で1000円とかアホかwと思ったんですが面白そうだったので。微妙に読み残しあったりします('A`)

古代における都市の誕生から、近年における計画都市、現代のメガロポリスへと都市形態の変遷を年代順に追っかけていく内容。著者が慶応で行った講義をもとに新書版に再構成しなおしたのが本作なわけですが、各時代ごとの都市の特徴を非常に丁寧に、悪く言えば少しくどい位に解説してくれるので分かりやすいんですけどちょっと冗長に感じましたね。あとシヴィライゼーション好きにはピンとくる単語多いんでニヤニヤしながら読めるかと。都市発展のために不満と衛生を抑えるという都市計画の肝の部分を上手くゲームに取り入れたのはさすがだなあ>シドたん